訪日外国人観光客が回復基調にある中で、タイ人観光客の存在感はますます高まっています。
日本文化や食への関心が高く、リピーターとして何度も来日する人が多いことも、タイ市場の特徴のひとつです。
一方で、訪日タイ人向けにWEBサイトを用意しているにもかかわらず、「思ったほど集客につながらない」「タイ語に翻訳したが反応が薄い」といった声を耳にすることも少なくありません。
その原因の多くは、言語対応そのものではなく、情報の伝え方や設計思想にあります。タイ人観光客は、日本人とは異なる情報収集行動や価値判断の基準を持っています。検索エンジンだけでなくSNSや口コミを重視し、公式サイトには「安心できるかどうか」「実際に行ったときに困らないか」を求めています。日本語サイトをそのまま翻訳しただけでは、この期待に十分応えることができません。
本記事では、実務の現場で見えてきたポイントをもとに、訪日タイ人向けWebサイトに本当に必要な考え方と設計のポイントを整理していきます。
訪日タイ人の情報収集行動を理解する
いのが情報収集のプロセスです。日本人のように検索エンジンを起点に比較検討し、公式WEBサイトをじっくり読むという行動とは異なり、タイ人は複数の情報源を並行して使いながら意思決定を行います。
多くの場合、最初のきっかけはSNSです。FacebookやInstagram、近年ではTikTokで流れてきた投稿や動画を見て興味を持ち、「行ってみたい」「体験してみたい」という感情が先に生まれます。その後、Google検索で場所や名称を調べ、公式WEBサイトやGoogleマップで詳細を確認するという流れが一般的です。
加えて、タイ人の情報収集で見落とせないのが口コミサイトやレビュー文化の強さです。訪日前に日本の施設や店舗について調べる際も、こうしたサイトでの評価や体験談が判断材料になることは少なくありません。
このとき、公式WEBサイトに求められている役割は「魅力を伝えること」よりも「不安を解消すること」にあります。本当にそこに行けるのか、迷わず到着できるのか、営業時間は合っているか、料金は分かりやすいか。こうした基本情報がすぐに見つからない場合、タイ人ユーザーは深追いせず、SNSや別の候補へと移ってしまいます。
また、訪日タイ人は旅行前と旅行中で検索内容が大きく変わります。旅行前は比較や計画が中心ですが、旅行中は「今すぐ」「近くで」「簡単に行けるか」といった即時性が重視されます。移動中にスマートフォンで調べ直すことも多く、WEBページの構成や導線が複雑だと、それだけで離脱につながります。
さらに特徴的なのは、タイ語だけでなく英語や日本語の情報も併せて参照する点です。完全にタイ語だけで完結するとは限らず、写真や地図、数字情報など、言語に依存しない要素も重要な判断材料になります。だからこそ、文字情報だけでなく、視覚的に理解できるWEB構成が求められます。
このような行動特性を踏まえると、訪日タイ人向けWEBサイトは「読ませるWEB」ではなく、「迷わせないWEB」であることが重要です。情報量の多さよりも、必要な情報にすぐたどり着ける設計が、信頼と来訪につながります。
訪日タイ人向けWEBサイトに必須の基本要素
訪日タイ人向けWEBサイトを設計する際、特別な演出や複雑な機能よりも、まず押さえるべき基本要素があります。成果が出ているサイトほど、この「当たり前」を丁寧に整えています。
最優先で考えるべきなのは、スマートフォンでの使いやすさです。訪日タイ人の多くは、旅行中も含めてスマートフォンを主な情報収集手段としています。画面を開いた瞬間に情報が把握できること、操作に迷わないこと、表示が速いことは最低条件と言えます。日本語サイトをそのまま流用した結果、文字量が多すぎたり、タップしづらい導線になっているケースも少なくありません。

次に重要なのが、必要な基本情報がすぐに見つかる構成です。アクセス方法、最寄駅、徒歩ルート、営業時間、定休日、料金、予約の要否、利用可能な決済手段などは、訪日タイ人にとって「安心材料」そのものです。これらの情報がページ内に散らばっていたり、日本人向けの前提知識がないと理解できない書き方になっていると、離脱の原因になります。
言語面では、タイ語ネイティブが自然に読める表現であることが欠かせません。意味としては正しくても、不自然な言い回しや堅すぎる表現は、無意識のうちに距離感を生みます。訪日タイ人向けWEBサイトでは、「正確さ」と同時に「親しみやすさ」を意識したコピー設計が重要です。
また、視覚的に理解できる情報設計も基本要素のひとつです。写真やアイコン、地図を効果的に使うことで、言語の壁を越えて情報を伝えることができます。特にアクセス案内や利用シーンは、文章よりも視覚情報のほうが直感的に理解されやすく、訪問意欲にも直結します。
さらに見落とされがちなのが、他のサービスとの連携を前提にした設計です。WEBサイト単体で完結させるのではなく、Googleマップ、SNS、口コミページへ自然につながる導線を用意することで、ユーザーは安心して行動に移ることができます。逆に、外部情報とWEBサイトの内容に差があると、不信感を与えてしまう可能性があります。
これらの基本要素は、一つひとつは特別なものではありません。しかし、訪日タイ人の行動特性を理解したうえで整理されているかどうかで、WEBサイトの成果は大きく変わります。訪日タイ人向けWEBサイトにおいては、派手さよりも「迷わず使えること」「安心できること」が最も重要な価値になります。
訪日タイ人向けコンテンツの設計で差がつくポイント
訪日タイ人向けWEBサイトでは、掲載する情報の量よりも、情報の並べ方と伝え方が成果を大きく左右します。日本人向けWEBサイトと同じ感覚で情報を整理してしまうと、「必要な情報は載っているのに伝わらない」という状態に陥りがちです。
まず意識したいのは、日本企業側が伝えたいことと、訪日タイ人が知りたいことの優先順位の違いです。日本の企業や施設は、歴史や理念、こだわりを丁寧に説明したくなりますが、訪日タイ人が最初に知りたいのは「自分にとって利用しやすいか」「行ったら何が体験できるか」という点です。背景情報は、その後に補足として伝えるほうが理解されやすくなります。
次に重要なのが、体験を想像させるコンテンツ設計です。訪日タイ人は、実際にその場所を訪れた自分をイメージできるかどうかを重視します。文章で細かく説明するよりも、写真や短い説明文を組み合わせ、「どんな雰囲気なのか」「どんな人が楽しめるのか」が直感的に伝わる構成が効果的です。過度に作り込まれた写真よりも、体験の空気感が伝わるビジュアルのほうが信頼される場合もあります。
また、利用シーンを想定した情報整理も差がつくポイントです。訪日タイ人の中には、初めて日本を訪れる人もいれば、何度も来日しているリピーターもいます。すべての情報を同じレベルで並べるのではなく、「初めての方向け」「リピーター向け」といった形で、読む人が自分に必要な情報を選びやすくする工夫が求められます。
コンテンツの量についても注意が必要です。情報を増やせば安心につながるとは限りません。特にスマートフォン閲覧が中心となるため、一画面内で理解できる情報量を意識することが重要です。要点を先に示し、詳細は必要に応じて見られる構成にすることで、離脱を防ぐことができます。
さらに、口コミや第三者視点を意識した見せ方も重要です。訪日タイ人は公式情報だけでなく、実際に利用した人の声を重視します。レビュー評価や体験談を意識した表現を取り入れることで、WEBサイト全体の説得力が高まります。ただし、過剰な演出や誇張は逆効果になりやすいため、自然さを保つことが大切です。
このように、訪日タイ人向けWEBサイトのコンテンツ設計では、「伝えたいことをすべて載せる」よりも、「相手が知りたい順に整理する」ことが成果につながります。小さな設計の違いが、WEBサイト全体の使いやすさや信頼感を大きく左右します。
翻訳ではなくローカライズが必要な理由
訪日タイ人向けWEBサイトを制作する際、「日本語サイトをタイ語に翻訳すれば十分」と考えられることは少なくありません。しかし実際には、正確に翻訳されていても、ユーザーに違和感や距離感を与えてしまうケースが多く見られます。その背景には、言語だけでなく、文化や感覚の違いがあります。
日本語の文章は、背景説明や前置きを丁寧に積み上げていく構造になりがちです。一方、タイ語では要点を早めに示し、分かりやすく親しみのある表現が好まれます。日本語の構造をそのままタイ語に置き換えると、「回りくどい」「何を伝えたいのか分かりにくい」と感じられてしまうことがあります。
また、敬語や丁寧表現の考え方にも大きな違いがあります。日本語では丁寧さが信頼につながる場面が多い一方で、タイ語では過度に堅い表現が距離感を生みやすくなります。意味としては正しくても、「自分に向けられたメッセージではない」と受け取られてしまうと、WEBサイト全体の印象を下げてしまいます。
こうした違和感を防ぐために重要なのが、タイ人と協業しながらローカライズを行うことです。日本人だけの視点では気づきにくい表現のニュアンスや、違和感のある言い回し、優先すべき情報の順番は、タイ人の目を通すことで初めて明確になります。単なる翻訳チェックではなく、「この表現はタイ人にどう受け取られるか」という視点で調整することが不可欠です。
ローカライズとは、言葉を置き換える作業ではありません。訪日タイ人がどのような情報を、どの順番で知りたいのかを理解し、日本側が伝えたい価値をタイ人に自然に届く形へ再構成するプロセスです。文章構成、見出し、情報量、写真やアイコンの使い方まで含めて、総合的に調整する必要があります。
また、タイ人との協業は、ブランド価値を守るうえでも重要な役割を果たします。直訳によって生じる違和感は、「分かりにくいWEBサイト」「外国人向けに形式的に作られている」という印象につながりかねません。現地感覚を理解したタイ人と協力して作られたWEBサイトは、それだけで安心感と信頼感を生みます。
訪日タイ人向けWEBサイトにおいて、翻訳はあくまで出発点です。成果につなげるためには、タイ人と協業しながらローカライズを進め、日本側の意図とタイ人の感覚を橋渡しする視点が欠かせません。

訪日前・訪日中・訪日後をつなぐ導線設計
訪日タイ人向けWEBサイトは、訪問前の情報提供だけで役割が終わるものではありません。訪日前・訪日中・訪日後という三つのフェーズをつなげて設計することで、WEBサイトは初めて本来の価値を発揮します。
まず訪日前の段階では、WEBサイトは「安心材料」としての役割を担います。SNSや口コミをきっかけに興味を持ったユーザーが、公式WEBサイトを訪れ、営業時間や場所、料金、利用方法を確認します。このとき、情報が分かりやすく整理されていることが、来訪の決め手になります。訪日前のWEBは、比較・検討の最終確認の場と捉えることが重要です。
次に訪日中の段階では、WEBサイトの役割が大きく変わります。旅行中の訪日タイ人は、移動中や現地でスマートフォンを使い、「今すぐ確認したい情報」を探しています。アクセス方法の再確認、当日の営業時間、混雑状況、注意点など、即時性の高い情報にすぐたどり着ける設計が求められます。訪日中のWEBは、読むためのものではなく、迷わず行動するためのツールとして機能する必要があります。
そして訪日後の段階では、WEBサイトは次の集客につながる起点になります。訪日体験をSNSで共有したり、口コミを投稿したりする際、公式WEBサイトが参照先として使われるケースも少なくありません。訪日後の導線を意識して、SNSアカウントやGoogleマップ、口コミページへのリンクを分かりやすく配置しておくことで、自然な拡散と再訪につながります。
この三つのフェーズを分断せずにつなぐためには、WEBサイト単体で完結させない設計が重要です。SNS、地図サービス、口コミサイト、予約フォームなど、外部サービスと連携することを前提に導線を設計することで、ユーザーは迷わず次の行動へ進むことができます。
訪日前は「行くかどうか」を決めるため、訪日中は「スムーズに行動する」ため、訪日後は「共有し、次につなげる」ため。それぞれの役割を意識して設計されたWEBサイトは、単なる情報掲載の場ではなく、訪日タイ人との接点を継続的に生み出す重要な基盤になります。
まとめ
訪日タイ人は、SNSや口コミを起点に情報を集め、公式WEBサイトには「安心できるか」「迷わず行動できるか」を求めています。その期待に応えるためには、日本語WEBサイトをそのまま翻訳するのではなく、情報の優先順位や伝え方を見直し、ローカライズされた設計が欠かせません。
訪日タイ人向けWEBサイトは、一度作って終わりではなく、運用や改善を通じて育てていくものです。小さな設計の違いが、集客や信頼、口コミの広がりに大きな差を生みます。
これからのインバウンド施策において、WEBサイトは単なる情報掲載の場ではなく、訪日タイ人との関係を築き続けるための基盤です。翻訳にとどまらず、体験設計という視点でWEBを捉えることが、成果につながる第一歩になります。
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